■岐阜を訪ねる:岐阜東西通で屋根神さまを見た!

 以前、美濃市を訪れたときに乗ったバスの車窓から偶然発見した屋根神さま。その屋根神さまを求めて当日は岐阜市内を東西に走る岐阜東西通を歩いてみた。すると、鉄製やぐらの上や家と家の間、そして待望の屋根に上がった屋根神さまを発見した。当地では「アキヤさん」と呼ばれる秋葉神社について、実際におまつりしている方にお話を聞くことができた。(Q=筆者)
 
Q:こちらの神さまは何がまつってあるのですか?
A:これは町内のアキヤさん、つまり秋葉神社です。飾る場所がなかったのでね。でも先代が自治会の会長さんをやっていた関係で、町内でまつる場所がなかったから、ちょうど家を建て替えるときだったものですから、まつる場所を提供するということになりました。たぶん、この高さ(一段高い場所)に飾ってあるものはみんな秋葉さんじゃないでしょうか。

Q:この通り(東西通)沿いにも何軒かありますよね。
A:岐阜でも昔からのまちは家と家がくっついいましたからね。秋葉神社をまつるスペースがなかったようですね。その地域の有志というか善意のある人が場所を提供したようです。材木町(長良川沿いに残る昔ながらの町並み)の方にもあるし。みんな多分、同じ理由だと思いますよ。ようは飾る場所がなかったからね。

Q:この神さま自体は最近のものですか、先ほど家を建て替えたとおっしゃいましたが。
A:40年くらいになるでしょうかね。

Q:神さま自体は昔からあるものですか。
A:町内会がうまれると自動的にですね。岐阜市の伊奈波神社の末社のような形でまつっています。

Q:伊奈波神社自体は火の神さまをまつっているわけではないですよね。
A:岐阜の神さまの総本家とでもいえましょうか。岐阜市に住んでる人たちにとってあそこが本山ですからね。

Q:ということは、名古屋でいうと熱田神宮みたいなものですか。
A:そうですね。熱田さんとは格が違いますがね(笑)。本当は静岡にある秋葉神社に行っていたのですけど、昔はね、行楽がない時代には町内から有志をつのって、静岡県の秋葉神社まで行きお札をもらって帰ってきたものですが、もちろん今でも静岡に行かれる町内会もあるのでしょうが。でも、時間もお金も大変だから(笑)。近くのお宮さんでもお札を発行してくれることになったからね。

Q:この神さまは何か特別なおまつりがあるのですか?
A:1、15日におまつりします。お供物も出しますし。一年に二回かな、お宮さんから宮司さんに来てもらってお祓いをしてもらいます。

Q:それは12月16日ですか。
A:いや、左義長の前日に来てもらうのと、それからもうひとつ、春の岐阜祭、伊奈波さんのお祭りと連動してやりますね。

Q:伊奈波神社のお祭りにあわせて町内ごとでもまつるんですか。
A:そうです。よく気をつけて見てると、家の間とか側溝の上とかにもまつられていますよ。

Q:確かにいろいろなところにまつられていますね。私も歩いてここまで来たのですが、さまざまなまつり方の神さまを見かけました。こういった神さまはこの辺りにはたくさんあるのですか。
A:昔は各町内にひとつはアキヤさんあったんだけどその数は減りましたね。人が減り町内がくっついたりしましてね。私たちは習慣でやっているだけですけどね。

Q:ところで名古屋ではこういう神さまが少なくなりつつあります。いま現在、140軒くらいしかないんです。昔は町中にあったらしいのですが、戦争で焼失したり、やられる方が少なくなってきたり。あとは高齢化とか。
A:飾るの大変でも、こちらではなかなかむげに止めるなんてことはできませんね。

Q:神さまですからね。だけど、おまもりするのが無理だと止めてしまうようですよ。
A:だけど、なかなかそれを言い出せる人がいません。

Q:名古屋の場合だと、熱心な方がなくなられたときにそれを機にやめようか、ということもあるらしいのです。そこぞこの都合でやられたりやられなかったり。
A:だけど、みんな年とってくるとそういうことをやるんだし、順送りでやる人も出てくるものではないでしょうか。

Q:たしかに、それでやられる方が出てこればいいのですが。でも代が変わって若い人たちが多くなるとやり方も分からなくなってしまいます。それが途絶える理由になることもあるみたいです。
A:その家々を守っている人たちがですね、その家々の習慣とか、だいたいおばあさんがやってますが、それをお嫁さんがやるようになる。そういう感じに普通に伝承されていってると思います。地域の行事もそこの家の主人が出てきていたとしても、年をとればそこの息子がいやでも出てこざるをえない。そうやって知らない間に伝承されていくと思うんですけどね。

Q:そうやって伝承されていけばいいと思うのですが。
A:ただ深く聞いているわけじゃないから分からないこともあります。意味分からずにやっとることもありますしね。

Q:そういう面では名古屋は途絶えてる地域が多いようですね。最近になって神さまの減り方が速くなってきていて、数年で数十軒がなんらかの形でなくなっています。
A:だけど、なくそうとする手間を考えたら、続けていった方がいいような気がしますが...

Q:それが名古屋では建物の新改築などの理由で続けていくことが難しいようです。お社自体も形は残っていても中が何もはいっていないものもあります。昔はまつっていたのだけど、おまもりできないから止めてしまう。
A:さしたる手間でもないと思うのだけど...。供え物といっても、米と塩と酒があればいいし。

Q:名古屋の場合、おまつりをやられるところはきっちりやられます。半面、簡略化してやられるところもある。お社自体は百数十年前に作られた立派なものなんですけどね。
A:やめられることの方が勇気がいると思います。

Q:やっぱり、神さまですからね。私の聞いた話だと、屋根神さまは秋葉神社をまつっていますよね。一度、おまつりをやめられたのだけど、そしたら火事になって、また再びまつりなおしたらしいです。
A:以前は本当に火事が多かったです。木造家屋ですから、一軒燃えれば、全部燃えてしまう。(木造家屋が多い)材木町が一生懸命まつっている強い理由はそういうことだと思いますよ。

Q:火の恐さというものがありますよね。
A:材木町にはうだつがあるでしょう。うだつは火災の類焼予防ですから。

Q:ほんとうにいろんな理由があってまつったりまつらなかったりというのが名古屋の現実です。ただ、やめられた方でも、まつってた方がよかったといわれる方もいらっしゃるんですよ。でも町内の大多数の意見としてなくしてしまうので、それに従わざるをえない。
A:みんな面倒臭いと思うこともあるかもしれないけど...

Q:それは熱心に信仰されているということですね。
A:いやあ、そんなことはないですよ。習慣ですからね。ただお宮さんに来てもらうときはたしかに、火事だけはないようにというのはあると思いますが。

Q:その願いや気持ちっていうのは名古屋でも同じだと思うのですけどね。
A:それ以外は単純に習慣ですよ。だって前の当番の人が終わると次の当番のところに道具がくるから。飾るものも、若い世代がやるときはシンプルなものです。米と塩とお神酒だけですよ。それぞれの当番によるけど、年輩の人がやられる場合はいっぱい飾られます。

Q:1、15日には幕を飾ったり、提灯を飾ったりということはあるんですか?
A:いや、ないですね。本当にお供物だけ。その日の日の暮れには下げてね。

Q:そのときに、かがり火を焚いたりということは。
A:ないですねえ。そこまでやると続かないですね。ちょっと手があいたときに来て飾って、手があいたときに下げてといくところでしょうか。

Q:ありがとうございました。

 いちがいにはいえないかもしれないが、岐阜市の方の話からは町内の神さまを守ることに対して熱心というよりも当たり前とする気持ちが感じられた。火の恐ろしさを知るからこそ火伏の神に対する信仰心の厚さもそうだが、火災から守っていただくかぎりお守りするのは当たり前という気持ちとでもいえばいいだろうか。だからこそ、名古屋の現状を聞いたとき、かなり驚かれていたようだった。

 それにしても岐阜市内には多様な祭祀形態の秋葉神社を見ることができる。屋根の上もあれば脚上、側溝の上など。名古屋人以上に祭祀に対し苦心している様子がうかがわれた。各町内にいまでも一社ずつまつられているよいうが、名古屋市内よりも多い可能性も否定できない。少しずつ岐阜の神さまもレポートしていきたいと思う。