■祭礼レポート:羽島市竹鼻の屋根神街道を行く <上>

 先日、ブログ版「屋根神さまのある風景」に一通の手紙をいただいた。読んでみると、岐阜県羽島市で屋根神さまを見かけたという読者の方からの情報のようである。すこし長いが紹介しよう。

 「yanegamiさん、こんばんは。(略)岐阜県羽島市で多くの屋根神さまを見かけました。(略)こんなに多くの神様をみかけたのは初めてで、びっくりしています。今回は天候が悪く、これより先へ行くのは断念したのですが、まだ神様があるのかもしれません。よろしければ訪れてみてください」

 その読者の方のコメントによると、屋根神さまが多く見られるというのは羽島市を通る名鉄竹鼻線江吉良(えぎら)駅付近という。羽島どころか岐阜についてはそれほど詳しく知らないので、果たして羽島・竹鼻とはいったいどういうところだろうか。屋根神さまがたくさんあるとは何を意味するのか? 期待に胸ふくらませて名鉄電車に飛び乗った。

 名鉄本線を笠松駅で竹鼻線に乗り換える。新幹線駅である羽島まで続く単線のローカル線だ。車窓からはところどころに昔ながらの格子戸をつけた民家が見られる。はやる気持ちを押さえきれずついその一階屋根に目をやるが、屋根神さまらしき社殿は見当たらない。屋根神さまが多く、今回の旅のスタート地点である江吉良駅は笠松より八番目の駅だ。竹鼻線の多くの駅がそうであるように江吉良駅も無人駅だった。

<新道(しんどう)>
 さて、情報にあるように駅からすぐ南の小さな踏切を越えて路地を進むと街道らしき通り(江吉良商店街)に出る。右(南)に回り通りを進むと東側の家の一階屋根部分に発見した。社殿はガラス扉のついた箱型。中には木箱型社殿が納められている。扉が開いており、神棚がまつられているのを確認した。

 さっそく近所の方から話を聞いてみた。「ここは新道(しんどう)2の神さまといって、まつっているのは氏神の野々宮神社と豊川(稲荷)さん、お伊勢さん、秋葉さん。この前の道は笠松からお千代保さんまで続く道で昔は商売屋さんが多かったんだわ。そんだもんで豊川さんをまつっとる。だいたいどこの町内も40軒くらいまつっとるよ。毎月1日に『年行事』が、まつりの準備をするよ。ここの神さまは以前は路地の中にあったけど、事情があって、2月か3月だったかな、いまの場所に移転したんだわ」
※『年行事』=町内の行事を受け持つ当番で、2年に一度交代する。

 この新道という地区は町内が1、2、3と区切られており、新道1の神さまは上記新道2の北側に位置する。水路脇、コンクリート台上にまつられている神さまの社殿を覆う覆殿は最近できたようだが、木造の社殿自体はかなり古そうだ。大きな箱型社の中に一社用の神棚が二つまつられている。付近の餅屋さんに話を聞いた。

「神さまは秋葉神社と伊勢神宮をまつっているよ。だいぶ前にぼやが出てね、そのとき秋葉山でご祈祷してもらいましてね。それ以来、火事はないね。コンクリートで覆ってきれいになったけど、輪中をふさぐ工事をするもんで2年後くらいにまた移転しなきゃいけないよ」「おまつりは毎月1、15日にやってるよ。『年行事』っていう当番が掃除したりお神酒やお供物をまつったりするよ」

 ちなみに街道の南側に位置する新道3の神さまは屋根の上にまつられている。名古屋で見られるような破風のある社殿でガラス扉がついており中が見える。中の社殿は閉まっていたが、社殿の下には祭礼時に使用するためか、木わくが備え付けられていた。

<街道を北へ>
 のっけから三社の屋根神さまと出合うことになり、気分は高まる一方だ。かつて山地英樹さんの写真集「なごやの屋根神さま」をカバンにたずさえて名古屋市内にある屋根神さまを探しはじめたころの気持ちに似ている。もちろん既に廃社になったり消滅した社もあったが、それでも地図とにらめっこしながら自転車で路地を抜け、三社の提灯が飾ってある屋根神さまを発見したときのうれしさは格別だった。まだあるはずだから次行ってみよう! という気持ちの高ぶり。今日はなんだか久しぶりの胸の高まりを感じてしまうのだ。

 そして道なりに進んだその時、西区旧六句町をほうふつとさせる神さまを発見した。なんと社殿が二つ並んでまつられているではないか。六句町とは違い赤い屋根の同じ形の社殿が双子のように並んでいる不思議な形態だ。祭神は不明だが、新道1の神さまが別の神棚に伊勢、秋葉の2社をまつっていたことから、こちらもそうではないかと思われる。

 その後も一定間隔でまつられている神さまを見ながら北上する。するとまたもやどこかで見たような風景だ。西区枇杷島の美濃路沿い、金物屋さんの入り口上にまつられている神さまがある。家(店鋪)を改築するさいに神さま用のスペースを設け、社殿をはめ込む形で納めている。美濃路にはほかにも医院の屋根にくぼみを作ってまつっている社もある。

 同じ金物屋さんの入り口付近ということでよけいな話をしてしまったが、竹鼻にもどろう。「リビング三浦」という雑貨店の入り口上、二階窓下部分に社殿がまつられている。新しく作られたような社殿の内部には、三社用の神棚が見られる。社殿前には提灯をつるす鉄製のポールを確認した。推測だが、こちらも店鋪を改築するさいに社殿ごと新しくしたのではないだろうか。どちらにせよ町の人々の信仰心の厚さを物語る光景に違いない。