屋根神さまを撮り歩いたときのエピソードもお話したいと思います。芥子川さんの本に載っていたある場所を訪ねて行くと、そこには影も形もありませんでした。多分この家だろうと思って「お宅の辺りに屋根神さまがありませんでしたか」と尋ねましたら「ありません」との返事。「確かこの家にあったようですけど、私は個人的に屋根神さまに興味を持ち探し歩いているんですが」というと、「うちの屋根にあったのですがもうなくなりました」と打ち明けてくれました。屋根神さまをなくしたことの後ろめたさみたいなものがあるようでした。そこ以外にも同じようなことが何軒かありました。
 西区内の長屋で屋根神さまの撮影しておりますと、ある女性から「隣の屋根神さまを持って帰ってちょ〜」といわれたこともありました。理由としては1、15日の月次祭の夕方にかがり火を焚く際に火の粉が自分の家に飛んできて危険だから持って帰ってくれと。どうやら私が役所の人とでも思われたようでした。またあるところでは、真新しい家を建てた方が、すぐそばに古ぼけて汚くなった屋根神さまがありそれが目障りだったようで、「変なものを信じていて困る」といわれたこともありました。一方で、私が写真を撮り終えたあとで手を合わせていると、「お参りしてくださってありがとう」とお礼をいわれたところもありました。おまつりの時などは「お宿でお神酒でも飲んでって」とすすめられた場所もあります。
 屋根神さまは下町に多いのですが、棟割り長屋の袋小路といういわゆる「閑所」の雰囲気が好きで、写真の中にその雰囲気を出せるよう自分なりに努力をしてきました。

※2010年3月6日に開催されたセミナー「残そう! 屋根神」の講義録を連載形式で掲載いたします。