さて、屋根神さま自体は、時代の流れというか様々な事情があって減る一方です。芥子川さんはこの本の中で廃絶の理由として、終戦後のアメリカ軍の進駐、住民の入れ替わり、道路拡張、伊勢湾台風、家屋の改築、商店街の改装、自動車の氾濫、男性が働きに出て老人と婦人だけになったこと、と八つをあげています。そのほかにもいろいろと理由があって減少は現在も続いており、芥子川さんは巻末に、
「一千年にわたる天王信仰が、名古屋という大都市において、屋根神という小祠に結実して百年余の命脈を保ったことは、まことに珍しいことで、民俗学の上からも貴重なものといわねばならない。都市形態の変貌、人心の移り変わりから、早晩その姿を消してしまうであろうが、そうした運命が予測されるだけに、この民俗学的遺産である屋根神さまをいとおしむこと切である」と書かれています。
 私自身はどう考えているのか。講演の前に、2月15日、3月1日の月次祭と3月4日の三回で西区内80ヶ所の、屋根神さまが「ある場所」と「あった場所」を見て回りました。形骸だけが残っているならまだしも、形骸そのものもなくなっていたところもありました。屋根神さまを残す残さないはそこに住んでいる地域住民の方々が決めることだと思います。
 最後に写真集のあとがきに私はこのように書いております。
「私のつたない写真集が都市のフォークロアのひとつの記録としていささかでもお役に立てれば幸いです。私は今後も屋根神さまの消滅をひとつの座標軸として都市の変容を引き続き見守っていきたいと思っています」

名古屋市立の図書館(鶴舞図書館以外)では芥子川律治氏著「屋根神さま」と山地英樹氏著「なごやの屋根神さま」が借りられます。

※2010年3月6日に開催されたセミナー「残そう! 屋根神」の講義録を連載形式で掲載いたします。