101017港区東海通中之組14

辰巳町の神楽屋形に引き続き、翌年は中之組の神楽巡行にお邪魔した。

中之組神楽の屋根の頂上部には弁慶と牛若丸の五条大橋での出会いが表現され、両脇をシャチホコが守り、鬼面がにらみをきかせている。

しかし、そのゴージャスな黄金色に輝く神楽屋形のシャチホコが巡行中に取れてしまったという。
中之組の神楽についていきながら、コトの真相を聞き出そうと町内に人に声をかけた。

前年のことだった。
僕が辰巳神楽とともに稲荷社の境内に戻ってくると、あとから現れた中之組神楽の様子がおかしい。

片側のシャチホコがない。

巡行中に屋根に取り付けられた細かい彫刻が取れてしまうという話はよく聞くが、大きなシャチホコが取れるなんてことはあるのだろうか。

「横断歩道の歩行者用の信号にぶつかっちゃってね」

稲荷社境内から出発した神楽屋形は町内の人々に先導され自分たちの町内のある地域を巡行する。
しかし田んぼのあぜを歩いた昔と違い、いまでは名古屋を南北に貫く大通りである、江川線という関門を突破しなくてはいけない。

恐らくは、信号を急いで渡ろうとあわてた際にシャチホコを歩行者信号にぶつけてしまったのだろう。

神楽屋形は秋の収穫を感謝して引き回されるものだった。

車社会に変ぼうした風景のなかを遠慮がちに進む姿に、時代の流れは伝統文化に“生きにくさ” という試練を与えているような気がした。

写真は愛知県名古屋市。