お酒が好きだった父。
なかでもひとり書斎に籠るときのお供にはウイスキーが欠かせなかった。
パソコンのマウスの傍には常に水割りが入ったグラスが置かれていたことを記憶している。
ちびちびやりながらパソコンに向かったり本のページをめくるのが父にとって至福の時間だったのだろう。

父が亡くなって初めての正月。
主を失ったウイスキーをどうしようかと話し合った。
ハイボール好きの義兄がもらおうとしたところ姉が遮ったので、我が家に来ることになった。

封が開けられ上から数センチなくなったサントリーの角瓶。
持ち帰って炭酸水と割り即席でハイボールを作った。

「うちはウイスキーなんて飲まないから」

なんていってたけど、口に含むと香り高いウイスキーが炭酸の泡とともに口内を刺激する。
ハイボールが人気とは聞いていたけど、こんなに美味しいとは。
父の角瓶好きが何となく理解できた気がした。
結局、ハイボールにはまり数日で空になってしまった。

父が買った最後の角瓶なので捨てられず、花瓶として再利用することにした。
いまは桃の花を飾って父を偲んでいる。