ひとの仕事人生で十四年って長いか短いか。
二十二歳で大学を卒業して六十の定年まで勤め上げたとして、三十八年。
卒業と同時に就職して、転職せずひとつところで仕事している友人もいるから、彼らと比べれば十四年なんてたいしたことはないかもしれない。

休職といいながら数日引き継ぎで出勤していたが、昨日は最後の出勤日だった。
非常勤の介護職員として採用された2005年からいまのところでお世話になっていた。

「二年くらいでやめるようかな」

最初はそんなこといっていたけど、仕事に必要な資格を取り続け、三年前に責任者になった。
自分から進んでなったわけではなく前任者の異動でやむなく、である。

初めて経験する管理職。
現場の仕事はそれなりに経験を積んでいたのでなんとかなったけど、事務や職員の勤怠管理等、事業所の運営は思った以上に苦労の連続だった。
相談できるひとが近くにいなかったこと、自分がやらなきゃ、といらぬ責任感や見栄が結果的に自分の首をしめてしまった。
それが父の死をきっかけにたまった疲れとして吹き出した。

仕事を辞めると決めてから。
事務所に保管してある過去の書類を手に取って眺めていた。
一枚一枚書類をめくると過去の記憶が当時の情景を伴って鮮明によみがってきた。
事務所で淹れてもらったコーヒーの味、昼食のお弁当を買いに行ったお店、仕事終わりにコンビニで買ったビール。
フタをしておかないと次から次へと頭のなかにわき上がってくる。

勢いが盛んだった時期もあった。
りきみ過ぎて離れていったひともいれば、頼りない僕を常に励ましてくれるひとたちもいた。

感謝、すてきな時間を僕に与えてくれた利用者さんへ。
感謝、一緒に働いた仲間たちへ。