松江に降り立つと晴天にも関わらず、涼しい風が吹いていた。
半袖Tシャツの上に薄手のウインドブレーカーを羽織っただけの格好では少し肌寒い。
グーグルマップで検索すると「プチ移住」の拠点であるマンションは松江駅から歩いて五分ほどなので、自転車は駅で組み立てず、マンションまで輪行袋に入れたまま持ち運ぶことにした。

エレベータを上がり部屋にやってきた。
出雲国の式内社を訪ね回る旅の拠点である。
なかに入り空気の入れ替えのために窓開けた。
西側の住宅街の奥には宍道湖、南側にはしなった弓のように山陰本線の線路が伸びている。

「松江に来たんだ」

窓から景色を眺め、計画していた「プチ移住」がいままさに始まったことを感慨深く思った。

今朝の午前六時二十分。
立て続けにトイレにこもった。
「プチ移住」がどうなるのか、ちゃんと松江での生活が始められるのだろうか、心配で不安だったのだろう。
見送りの妻には緊張している姿を見透かされていた。

なんともないといえばそりゃウソだ。
だって数日で帰ってくる旅行ならまだしもひと月もいるわけだから。
一体どんなひと月になるのだろう。
不安も多いが、まずは拠点にたどり着き窓からの眺めにほっとした。

荷物を片つけてから近くのスーパーと、あらかじめ調べておいた酒蔵に日本酒を、そして米屋さんに米を買いに行った。
大橋川にかかる新大橋を渡ると、落ちかけた太陽が宍道湖の水面を照らしていた。
松江に着いてから動きっぱなし。
川岸のベンチに腰掛けるとおじいさんが僕のFATBIKEを目にとめて話かけてきた。

「ほう、松江にひと月いながら神社を回るんか。自転車でかね」

FATBIKEを肴に僕のひと月の予定を話すと、「バイクじゃなくて自転車で回るのが好きなんだね。車が多いから気をつけて」
そういって立ち去った。

松江の初日。
無事に着いてほっとしたから酔いの回りも早い。
明日から本格的に始動する。