出雲国の神社巡りは僕が松江にやって来た翌日の五月八日から始まった。
逗留先のマンション近くから徐々に距離を広げていき、「延喜式」掲載の意宇郡、嶋根郡、楯縫郡、秋鹿郡、出雲郡、神門郡、仁多郡、能義郡に所在する神社を訪れてきた。
明日、飯石郡と大原郡に残る神社を巡れば、僕がテキストにした「式内社調査報告」に挙げられている神社(旧社地以外)を訪れたことになる。

これまで何度も繰り返している通り、「延喜式」における出雲国の神社数は大和国、伊勢国に次いで多い。
かつて伊勢国の神社を三年近くかけて回った経験から、出雲国はそれよりも少ないし、松江を拠点に毎日回ることができれば、二週間くらいで終わるのではないかと甘くみていた。
自転車で走ってみて実感したのは、出雲国は山だらけで、神社を訪れるには毎日必ず峠を越え、山によっては麓の登り口に自転車を置き、自分の足で登らなくてはならないこともある。

毎日毎日しんどい思いの連続。
でも、頂上の景色に登山途中の苦労を忘れてしまうように、明日が最後だと思うと、岬や山の頂上など様々な場所を訪ねた苦労は、時間をへて楽しい記憶に転化していった。

朝から晩まで自転車に乗る、しかも連続でというのは大学時代の合宿以降なかった。
それを四十五歳になってやったわけだから相当しんどかったけと不思議と慣れてまうものである。
体が慣れたころに終わるのはなんだかもったいない。
とりあえず明日で「プチ移住」、出雲国の式内社巡りはその目的を果たすことになる予定だ。