今日は松江の最終日。
借りていたマンションは午前十時に退去しなくてはいけない。
荷物の片付け・発送、部屋の掃除・ゴミ出しなんかをやっていたらあっという間に十時になった。

外は雨。
隠岐の島に旅立つので、とりあえず松江から境港に向かう。
早朝は雷も鳴ってかなり大雨だったけど、駅に着いて輪行の支度をしている間中、雨はやんでくれていた。
ラッキー! 

しかしである。
山陰線に運休と大幅な遅れが発生。
倒木があり、運行に支障がないか点検に時間がかかっているらしい。
米子行きの電車は五十分遅れて松江に到着。
それでも米子から乗る境線は境港駅にフェリーの出航時間よりかなり早い時間に到着する予定だ。
むしろターミナル近くでどう時間を潰そうか。
そんなことを悩みながら乗車した境線は米子駅を出発した。

しかしここでも問題発生。
途中の弓ヶ浜駅では反対方向の列車の待ち合わせがある。
こちら側の電車が駅に停車していると運転席から断続的に聞きなれない音が聞こえている。
異常を知らせる警報音?
その予感は的中した。

車掌から、米子行の列車が踏切で車と衝突事故を起こした、ついては長時間運休する可能性がある、とアナウンスがあった。
境線は単線のはずだから事故を起こした車両が線路をどかない限り発車は無理である。
フェリー出航までおよそ一時間。
このまま待っていても動くのはいつになるか分からない。

そのときふっと自転車で境港に向かえないだろうか、当たり前といえば当たり前過ぎるアイデアが頭に浮かんだ。
地図を確認すると弓ヶ浜駅から境港駅までは残り九駅あるが、道はほぼ一直線。
これなら行ける! 

駅前には境線を降りた乗客が不安そうにタクシーを待っていた。
その横でFATBIKEを組み立てた。
出航時間に間に合わなかったらどうしよう、ついいらぬ心配をしてしまう。
よくないことを考えるより、ペダルを漕ぐ足に全神経を集中させないと。
予想通り境港までの道路は平たんで比較的楽な道のりだった。
おかげで出航時間には余裕を持って到着した。
FATBIKEを再び輪行バッグに詰めるとちょうど乗船時間になった。
係員の指示で輪行バックを安全な場所に置くとそこから近い船室に向かった。

でも何かおかしい。
乗船時に列をなしていた乗客はどこに行ったのだろう。
僕が陣取った場所の周辺には数人しかいない。
目的地の西郷港までおよそ四時間。
予約した宿は港から近い。
何の疑問を抱くことなく、ビールの栓を開けた。
缶を片手にフェリーに乗れてほっと一息も束の間、検札があった。

「930円の追加です」

乗客が少ないから値段が上がったのかと本気でそう思った。
いやいや、そうじゃない。
二等券を買ったのに間違えて特二等の部屋にいただけのこと。

今日の僕はほんとに「踏んだり蹴ったり」
でもひとが少ない分、余裕のある船室でのんびりできたからこれはこれでOK。
問題はあったけど、こうしていまフェリーに乗っているじゃないか。
これだけでも幸せだよ。
出雲の神さまは、気をつけて隠岐に行ってこいよ、と見送ってくれているはずだ。