190509賣布神社1

松江に「プチ移住」したひと月の間、ほぼ毎日自炊していた。

朝食はご飯+味噌汁、昼食はおにぎり+即席味噌汁もしくはカップラーメン、夕食はご飯+味噌汁+おかずだった。
夕飯のおかずには意識的に魚を多く買うようにしていた。
松江市内のスーパーの鮮魚コーナにはトビウオ、ヒラマサ、レンコダイなど名古屋ではあまり馴染みのない魚が並んでおり、刺身も値段は名古屋より安く、それでいて近海物だから新鮮なのだ。
なかでもトビウオは刺身でも焼き魚でもおいしい。
またあごだしで作る味噌汁とシジミ汁は我が家では双璧をなしていた。

おかげで外食をすることはほとんどなかったが、まったくないわけではない。
記憶しているだけで三回外食している。
そのうち二回はイオンのフードコート内にあるマクドナルド。
通りかかったとき、マックフライポテトの香りで脳がやられてしまい、気づいたらレジに並んでいた。
それが二回もあった。
仕事の関係でこれまで最低でも月に一度は利用していたマック。

「ビックマックのセットにポテトはLサイズ、飲み物のスプライトはMサイズで」

いつものフレーズを松江でも難なく伝えられたことに安堵を覚え、ひとり、カウンター席でバーガーにがぶりついた。
故郷の味でも何でもないファストフードの味に懐かしさを感じ猛烈に食べたいという感覚。
いつの間にやら、マクドナルドの戦略にまんまと引っかかってしまっていたことを松江で再確認することになった。

さて、松江で外食したもう一回はラーメン屋。
休みの前の晩のことだ。
スマホで検索したところ出てきたのは大橋川にかかる新大橋北詰のお店。
歩いて行けるだろうと夜の伊勢宮界隈を通り過ぎて橋を渡った。
ラーメンを注文、あっという間に完食したけど、今となってはその味をまったく覚えていない。
おいしかったはずなのに記憶にないのはお店を出てすぐに起こった事故が原因である。
70センチくらいの段差に飛び乗ろうとしてジャンプしたのはいいが、暗かったのと少し酔いが回っていたことから段差の上に足がのらず、段差の端で右足の膝上を強打してしまった。
道路にはタクシーや通行人の姿があった。
なんと恥ずかしいことだろう。
出血はなかったものの、足の痛みがひどく、歩くときには足をまっすぐ伸ばさないと常にカクッときてしまう。

右足をかばって歩きながら新大橋を越えようとすると、橋の南側には森がうっそうと茂っていた。
賣布神社の森だ。

僕が暮らしたマンションから、大橋川を渡って北側に向かうときは賣布神社に、南側に向かったり宍道湖大橋を渡る際には白潟天満宮に手を合わせて一日の無事を祈るのが習慣になった。
遠い地でケガをしてはせっかくの「プチ移住」が台無しになってしまうことを心配したからである。
もちろんラーメン屋の一件がきっかけとなったことはいうまでもない。
神社を巡っているとはいえ、一番頼りになるのはお参りしやすい身近な神さまなのだ。

賣布神社は境内が繁華街に面する町の神社である。
入り口にFATBIKEをたてかけて鳥居をくぐり正面の拝殿まで35歩、まずは参拝。
マツが多く、ほかにもクスノキや樹種は分からないけど玉垣内にまつられたり注連縄を巻かれた木もあった。
町なかの神社にしては背の高い木が多い印象だ。

境内東側は新大橋につながる道路に面しているので早朝とはいえ通行量が多い。
でも車が途切れる瞬間に境内は静寂に包まれ、手水舎に流れる水の音だけが響き渡る。
祭神は速秋津比賣神。
潮の流れや地形の変動に伴い遷座され、現在の大橋近くにあったことから「白潟大明神」「橋姫大明神」とも呼ばれた時代があったという。

写真は島根県松江市。

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