式内社巡りのテキストにしている「式内社調査報告」には地図とともに本殿や拝殿など神社の建物や境内を広角に撮った写真が一、二枚載せられている。
地図も写真も実際に神社を訪ねるにあたりとても参考になるから、ありがたい。

そんなありがたい存在である「式内社調査報告」もかつては図書館や熱田神宮内の熱田文庫まで出向かなくては閲覧できなかった。
手元にないと不便と思い昨年、古書で全巻を手に入れた。
いまでは出発前とブログ原稿を書くときに力を貸してくれる存在として僕を支えてくれている。

しかし、である。
ごくわずかだけど、写真が“まずい”ときがある。
「式内社調査報告」の執筆陣は神職、郷土史家、大学、高校など学校の先生が担っているが、記事の前に必ず目にする写真のレベルが執筆者によって雲泥の差があるのが残念でならない。
ときに、うまいなぁと構図を参考にしたいと思う写真もあれば、明らかにヘタクソな写真もある。
写真家が撮ったものではないので仕方ないと思う半面、記事の内容がよくても神社の建物が左右どちらかに傾いていたりピンボケがあると、記事の価値も半減しやしないかと心配してしまうのだ。

暗闇にうっすら浮かび上がる社殿。
斐代神社の写真を初めて見たとき、てっきり洞窟のように日の当たらない場所に鎮座するのだと想像していた。

お茶で有名な唐川。
集落内にある唐川館の建物の前を通り、広がる茶畑を見ながら神社の場所を探しペダルを漕ぐ。
すると「斐代神社この上←」と書かれた看板が山際に立っていたが、矢印が指すのは道なのか、茶畑なのか。
考え込んでいるとおばあさんが通りかかったので声をかける。
「この上ですよ」と境内の場所をこと細かに説明してくださった。

整備された参道を歩いていくと獣害よけの金網の先に鳥居が立っていた。
そこから上がったり下ったりの道を進むと高台の上に社を見つけた。
すぐ横には小さな滝、「八王子滝」があり、さしずめ滝の守護神といった趣である。
社のある場所に近づこうとしたら茶色のカエルが飛び跳ねた。
鳥居から社まで73歩、まずは参拝。
岩場に鎮座する社の祭神は大穴持命の御子である味耜高彦根命。

由緒によると韓竈神社に合祀されていたのを昭和十三年四月、旧来鎮座していた八王子滝の崖の上に移設したという。
ちなみにここでも写真を撮ろうとしたが、崖の上に置かれた社殿を撮るのは難しい。
しかも森のなかなので薄暗く感度を上げないと手ぶれが発生する。
いまはデジタルカメラが主流なので感度調整も撮ったあとに写真を確認することも簡単にできる。
これがフィルムカメラだったら「式内社調査報告」の写真と同じように真っ暗闇の写真を撮っていたかもしれない。