渥美半島を自転車で走るのは二十年ぶりだった。
当時、誕生日や誕生日に近い日を選んでチャレンジ的なライディングをしていた。
確か二十七歳になって間もない日だった。
朝一番に名古屋市内の家を出てそのまま知多半島を南下。
先端の師崎から船に乗り渥美半島の伊良湖へ。
下船して一路、半島を東へ豊橋に向かい、豊橋からは旧東海道を走って名古屋に戻る予定だった。

師崎からフェリーに乗り伊良湖までは順調だった。
決して体調が悪かったわけではない。
伊良湖に着き豊橋に向う道を走っていると前から横から強い風が吹いた。
前からの向かい風はペダルを漕いで前に進む力を削ぎ、横からの風はバランスを失わせる。
加えてダラダラとした上り坂が続いたものだから豊橋でギブアップ。
友人に頼んで自転車を名古屋まで運んでもらった。

その後、トラウマとなり渥美半島へはなかなか足が向かなかった。
それほど長い距離ではないしムチャクチャな激坂があるわけでもないけど、ギブアップした経験があるとなかなか走ろうなんて気が起きなかった。

三河国の式内社巡りが大詰めを迎え、残りは五社となった。
地図を見るとそのすべてを一日で回ることは難しい。
ここ数日は本格化した梅雨のせいでなかなか晴れ間が見られないので、梅雨の晴れ間の今日は貴重な一日である。
走らない手はない。

前日に名鉄の株主優待券を格安に手に入れた。
これがあれば名鉄区間ならどこへでも行ける。
できるだけ遠いところ、といっても名古屋市内からではせいぜい豊橋くらいである。
名鉄で豊橋へ行き、豊橋からは豊橋鉄道で渥美半島の三河田原まで行くことにした。

この日の目的は三河国渥美郡の式内社、阿志神社一社のみ。
神社については後日書くことにして、往路は三河田原駅まで輪行、復路は豊橋まで自走することにした。
二十年前の嫌な思い出が蘇る。
天気がよいといっても南北を海に挟まれた半島には海からの風が強く吹いていた。
往路はその風にはばまれてしんどい思いもしたけど、逆に帰りは追い風になりの漕ぐペダルも軽く感じた。

午後十二時を少し過ぎて豊橋に到着した。
二十年前のような疲労感はなく、心地よい疲れと空腹を感じた。
一社だけなので午後三時には名古屋の自宅に帰ることができた。

二十年後の渥美半島サイクリングが心地よいものになったのは当時よりも自転車に乗る機会が多く、また肉体的精神的に多少なりとも成長があった、ということだろうか。