名古屋発! 町の神さま考

FATBIKEで巡る古社巡礼の旅...

名古屋市:熱田区

【愛知・名古屋市】巨木・神木・クスノキさん

140413熱田区高蔵公園1


神社を出るとすぐ隣が公園である。
砂場で遊んでいる子どもはいるが、日曜の朝ということもあってかひとの姿はまばらだ。

「ちょうどよぅ、古墳の向こう側ぐらいだわ。大きい木だで、行きゃぁすぐ分かるわ」

おじさんが指差すのは稲荷社後方にある古墳の方角だ。

公園に回ってみるとすぐに分かった。

木が植えられて小高い盛り土になった上に、肉食恐竜のティラノサウルスの足のような根が張り出している。
巨大化するクスノキを支える生命力の源である。

しかしあまりにも地表に露出してしまっていることが、この木に悪い影響を与えはしないだろうか。

ここは公園なので露出した根は子どもたちの格好の遊び場になってしまう。
栄養分を吸い取るための器官に傷がつくことは、クスノキの成長にとっていいはずはないだろう。

でもよく見ると、根は幹との境界が分からないほど短冊状の樹皮で覆われている。
また枝ぶりがよく幹からはヒコバエも出ていた。

人間が心配しなくとも木は自分の身を守る術を心得ているようだ。

写真は名古屋市熱田区。

※参考文献
名古屋市農政緑地局「生きている文化財 なごやの名木」1987

【愛知・名古屋市】巨木・神木・クスノキさん

140413熱田区高蔵結御子神社11

高蔵神社境内のもう一本の大楠は本殿へ向かう途中にある。
といっても玉砂利の参道からなかに入った場所にあるので見えづらいが、なかなかの名木である。

柵で囲われた大楠は根が肥大化してしまっており、ウイスキーを蒸留するときに使われる「ポットスチル」にそっくり。
大きく膨らんだ根の上に幹を突き刺したような形である。
根の表面は樹皮に見られる短冊状が細かくなったもので覆われており、ゴツゴツしている。

賽銭箱が置かれ、膨らんだ根の上にミニ鳥居が奉納されており、こちらも「楠神」でもある。

三脚を立てて写真を撮っていると、散歩途中に神社に立ち寄ったようなおじさんに声をかけられた。

「クスノキ撮っとるのか、ここのは立派だろう」

そう言いながら目の前にあるクスノキを見上げた。

「神社のも立派だけどよぅ、隣の公園のもすごいで見てきてぇ。でもよぅ、根が外に出てまっとるで、どうにかしたらなかんのだわなぁ」

写真は名古屋市熱田区。

※参考文献
名古屋市農政緑地局「生きている文化財 なごやの名木」1987

【愛知・名古屋市】巨木・神木・クスノキさん

140413熱田区高蔵結御子神社5

高蔵神社本殿の正面から右側を見ると、奥に大きなクスノキが立っている。

さすがは保存樹に指定されているだけあって幹回り樹高ともに見事なもので、見上げながら「すごいもんだなぁ」と声が出てしまう。

近くに行ってみると柵などはないが周りを石に囲まれ、手前に小さな祠と賽銭箱がある。

注連縄が張られた大楠の樹皮を触ってみた。
「気」のようなものは感じられないが、年月を経て丸々と育った幹はちょっとやそっとでは動じない、頼りがいのある、どんな願いでもかなえてくれそうだ。
まさに神木たるゆえんである。

ちょうど目通りのあたりに空に向かって生えた細いヒコバエに小さな鳥居がたくさん吊るしてある。

奉納者と願いが書かれたミニ鳥居。

明らかにクスノキに願掛けしているものである。
ということは、クスノキは参拝者の願いをかなえてくれる機能を持っているようだ。
高蔵神社とは違った神格、「楠神」である。

写真は名古屋市熱田区。

※参考文献
名古屋市農政緑地局「生きている文化財 なごやの名木」1987

【愛知・名古屋市】巨木・神木・クスノキさん

140413熱田区高蔵結御子神社1


「高蔵結御子神社」

地下鉄西高蔵駅を出て東側、参道のような細い道の先に鳥居が見えてくる。
僕は家から近いこともあって暇さえあれば散歩に出かけるお気に入りの場所だ。

高蔵神社といえば虫封じの「井戸のぞき」が有名で、六月一日の大祭時には子ども連れでにぎわう。
沿道には紅白のほうずき提灯が吊るされ、少ないけど露店も出て夜祭の雰囲気が楽しめる。

熱田神宮同様、高蔵神社が好きなのは社叢、その森である。
鳥居をくぐるとどんなに晴れた日でも本殿に続く道は薄暗く鬱蒼としており、同時に降り注ぐ日ざしをシャットアウトしてくれるのでとても涼しい。

ジャリジャリと玉砂利を踏んで本殿に向かい参拝する。

「保存樹に指定されているクスノキがあると思うのですが」

資料によると、高蔵神社と隣接する高蔵公園には幹回り五メートル級のクスノキが三本あるという。

以前に見たことあるような気がしないでもないが、念のため宮司さんに尋ねてみた。

「本殿の右側にあるクスノキのことでしょうか」

写真は名古屋市熱田区。

※参考文献
名古屋市農政緑地局「生きている文化財 なごやの名木」1987

【愛知・名古屋市】巨木・神木・クスノキさん

140516熱田神宮大楠1

村上社のクスノキに蛇と関連した昔話が伝承されているように、木と蛇には「ワンセット感」がある。

神社境内には、まつられている神木を囲むように「奉納○○竜神」と書かれたのぼりが立てられ、神木の前には竜神祠をまつり、ときに幹にできた空洞のなかに小さな祠を置いて卵をお供えしていたりする。

その竜神さんとはアオダイショウのことではないかと思う。

は虫類に関する本によると、本州で木のぼりのできる蛇はアオダイショウだけのようである。

またアオダイショウは、人家に住みついてねずみを取ってくれるので大切にされていた半面、飼っている小鳥を食べて嫌われることもある。

どちらにせよ人間と付き合いの深い蛇である。

熱田神宮で天然記念物とされている大楠。

最近参拝に訪れたとき、根元に小さな箱が置いてあることに気づいた。
箱には餅を焼くような金網が小さなすき間を空けてかぶせてあり、なかには卵が入っている。

隣にやってきたボランティアガイドと参拝客のやり取りを耳にした。

「この木にね、アオダイショウが住んでいるんですよ。二匹ね、たまに顔を出しますよ」

写真は名古屋市熱田区。

※参考文献
佐々木洋「『街の守り神』アオダイショウ」 「動物たちの東京物語」
ナショナルジオグラフィック ホームページ
http://www.nationalgeographic.co.jp/

【愛知・名古屋市】巨木・神木・クスノキさん

140330熱田区熱田神宮大楠1


名古屋市中村区、中村公園内の八幡神社の社殿裏手に、注連縄を巻かれた神木であるクスノキがまつられていることは以前紹介した通りである。

木に関心を持たなければ意識することはないが、園内には神木以外にも多くのクスノキが、特に外周に沿って植えられている。

また熱田区にあるわが家の周囲のように高層マンションや冷蔵会社の巨大な建物が多い環境でも、建物のすき間から葉の緑がチラホラ。
近くの八幡神社に植えられたクスノキの葉は、ベランダから見られる貴重な緑である。

名古屋市農政緑地局、1984年発行の資料によると、82年当時「保存樹」に指定されている木のなかでクスノキ(313本)が2位のムクノキ(124本)に圧倒的大差をつけて1位、全体の約四割(36.78%)を占める。

さらに幹回り5メートル以上の「巨樹」ではベスト14中、9本がクスノキ、しかも1、3、4、5、6、7、8、10、13位にランクイン。

そのうちの5本は熱田神宮境内に存在している。

写真は名古屋市熱田区。

※参考文献
名古屋市農政緑地局「生きている文化財 なごやの名木」1987

【愛知・名古屋市】石神に名古屋の道祖神を見た... わが名古屋の道祖神考

130210道祖金勢大明神

畑中地蔵は、地蔵と名づけられてはいるものの、ごく普通に見られる地蔵尊の姿とはかけ離れた自然石だ。

再び芥子川律治先生の「名古屋の民間信仰」を見てみよう。

「道祖金勢大明神」

伏見通の西側、路地を入るとつき当たりの会社の北側に妙安寺というお寺がある。
山門の手前には小さな堂があり、なかには石製と木製の男根がまつられているという。
いまでは秘仏化されているようで、残念だけど外からはうかがい知ることはできない。
その名が刻まれた石柱が堂の主人の存在を知らせているだけだ。

芥子川先生は著書の中で、道祖金勢大明神を男神、畑中地蔵を女神として道祖神として信仰を集めていたのではないかと推測されている。

畑中地蔵を女神(陰石)とするのはご神体の背面に通る筋がその根拠らしい。
一方の道祖金勢大明神には「道祖」と「金勢」という両雄の名を冠しているだけに、そう考えても違和感はない。

しかし本当のところはどうなのか分からない。
名古屋のように道祖神信仰が希薄な地域なだけに、僕にとっては疑問に思えて仕方ないのだが...

写真は愛知県名古屋市。

【町の神さま考】住宅街の癒し神

120523熱田区おさすり佛4

名古屋市熱田区。
中央卸売市場近くの住宅街を歩いていると、工場の壁際に小さな堂とその横に立てられたたくさんの幟が目についた。

「おさすり佛」

鉄工所の壁に面して作られた小さな堂内、ぶ厚い座布団に鎮座するのは高さ三十センチほど、正方形を少し丸くした形の黒い石で、線で目、鼻、口が書かれている。

「おさすり」という名の通り、多くの人々に触られているようで表面はつるつるしている。

午後三時半過ぎに訪れた時にも灯明がともされており、また幟の多さから地元では信仰厚く大切にされているのをうかがい知ることができる。

由来などは書かれていないが、ご神体をさする(触る)という行為に何らかのご利益が授けられるのだろう。

石そのものに力が宿っていて、触った手を媒介としてその力を信仰者の身体の病んだ部位に移し癒す、ということかもしれない。

この石神はどれだけ多くのひとを癒してきたのだろう。

写真は名古屋市熱田区。

【町の神さま考】畑中地蔵さんのご縁日

120624畑中地蔵7

毎月二十四日は地蔵尊の縁日である。
熱田区花町の畑中地蔵さんでも、
「近所の老人達が地蔵堂に集まりお経を唱え地蔵菩薩の徳を称えている」
(案内書)という。
そこで、どのような祭礼を行っているのか見に行ってみた。

午前十時過ぎ、畑中地蔵さん隣の堂の扉はすでに開けられていた。
かつて父親がお世話をしていたという男性とその兄が準備をしている。
花を替え果物をお供えし、周辺を掃除する。

「いまでは(参拝者が)一人抜け二人抜けで、今日もお寺さんにお経をお願いするだけです」

以前は周囲に住んでいる老人たちの厚い信仰を受けていたそうだが、亡くなったり、高齢のため出てこられないという。

十一時を回りようやくお寺さんが到着し、般若心経をはじめ二十分ほど読経の声が堂内に響いた。

「畑中地蔵講中...」
「本日参詣の善男善女...」

有志の人々が講を組み大切に守ってきた畑中地蔵さん。
盆踊り大会が開かれたり、常に多くの人々が集ったという。
もう一度そのにぎわいを取り戻せないものだろうか、と手を合わせながら考えていた。

写真は名古屋市熱田区。

【町の神さま考】神さまの溜まり場

120306畑中地蔵

東北や甲信地方を歩いていると、路傍に石仏や石碑を見かけることがある。
岩手県・遠野では早池峰山や金刀比羅宮、馬頭観音を、長野や山梨では道祖神や庚申、蚕影山などの名前を刻んだ石碑が並んでいた。
多くは複数体で、一見すると群れて集まっているから、そこは「神さまの溜まり場」ともいえる。

なぜ神さまが群れるのか。

そこが村や集落の境で、外部から悪霊や疫病の侵入を防ぐために立てられたのかもしれない。
これほど多くの神さまににらまれたら、悪霊たちもつけ入るスキはないだろう。

所変わってわが家の近くにも「溜まり場」がある。
通りに面した場所にまつられた畑中地蔵さんを主に、堂内には弘法大師、手水鉢の周囲にも小さな石仏や重軽石が並んでいる。
道路拡張や家屋の新改築により居場所を失い避難してきたようだ。
行き場に困った石仏がここに安住の地を見出したことは幸いだが、本来は難儀があった場所に神仏をまつるからこそ、その意味や価値が大きいのではないか。

守り神を失った土地はいまごろどうなっているのだろう。

写真は名古屋市熱田区。
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ブログについて
FATBIKEというタイヤの太い自転車に乗って延喜式内社を訪ねる旅に出ています。屋根神さまから式内社へ。自転車に乗って神社を訪ね、写真を撮りブログを書く、そんな楽しみに浸る毎日です!
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管理人紹介
1973年7月生まれ。以前は名古屋や愛知県の屋根神さまを探しては写真に残していたが、2015年に岡谷公二著「神社の起源と古代朝鮮」に触発されて敦賀市の式内白城神社を訪れたことから式内社に関心を持つ。現在は介護の現場で働く傍ら、各地の式内社をFATBIKEに乗って訪ねる日々を送っている。
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お知らせ
2016年8月現在、屋根神さまの残存確認は行っておらず、「市内屋根神所在地一覧」(2006年作成)に掲載されている屋根神さまのうちすでに消滅したお社もあると思われます。今のところ内容を更新する予定はありませんので、屋根神さまを訪ねる際は消滅したお社があることをご承知おきいただいた上で、「参考資料」としてご活用いただければと思います。
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